定年を迎えるまで私はサラリーマンで生きていくと思い、自分の成長はいかに会社組織の中で責任ある立場になれるか？を目標に未来を見ていました。
 
ある時、その無茶な頑張りが限界に達し、まず悲鳴を上げたのが体。

 
朝、立ち上がることが出来ない腰の痛み。
それでも這って会社に行き、自分の責務を果たす無茶をする。
合間を見つけて病院で痛み止めをもらい、近くの治療院で揉んでもらい、鍼を打ち、温めたりついには「お札」を貼ってもらったりと、20～30軒は治療をさまよう毎日は、診察券と回数券ばかりが増えていくのに身体はちっともよくならない…。
 
だましだまし体に鞭を打ってでも、会社で仕事をすること以外で自分に価値を見出すことが出来ず、常に不安と闘いながら痛いことが頭から離れることのない日々を過ごしていました。
 
そこから数年後の私を悩ませていたのが「心」を辛くさせる日々…。
 
仕事のプレッシャー、対人関係、周りとの比較、特に厳しかったのがパワハラに悩まされた数年のこと。
 
人格否定の罵詈雑言。
この時ほど言葉は人を傷つけるためにあるんだと痛感したことはありません。
 
私は笑うことを忘れました。
心を壊しました。
最悪の選択をしようとも思いました…。
 
そのどん底の私を助けてくれたのが、『公園の掃除をしていた見ず知らずのおじさん』です。
会社を飛び出し、いつの間にか公園のベンチに腰かけていた私の隣にそっと座り一言。
 
「悩み事聞いてやるから話せ」
 
私は人生で初めて「人に相談」できる喜びと、「人を頼る」大切さを教えていただきました。
 
その出会いで潔く会社を辞めることにし、同時に私の体をクリアーにした整体をモノにして人生の立て直しを誓いました。
 
 
私には二人の娘がいます。
 
上の子が高校最後の年末で、大学受験に向けてラストスパートしていた時、大きな悲劇が襲いました。
 
「血液のがん」
 
運動が得意な娘。病なんて無縁と思っていた娘に機械が繋がれ、体のいたるところに管が何本も刺さり、モルヒネがなければ痛くて１M先のトイレにも行けない…。
 
やせ細り、抗がん剤の影響で髪の抜けた娘。治りますか？医師ははっきりと答えないまま、告知の日は家族で思いっきり泣くことをしました。
 
でも、私たち家族を救ったのは娘の一言。
「もう来年の受験は間に合わないね。しょうがない、治すか！」。なんと強い子なのだろう。
 
行く先はやはり見えないもの。
 
抗がん剤を用いた標準治療、分子標的薬、様々な化学療法を進めるにあたり、骨髄穿刺やリンパ節の生検、尿道カテーテル。
毎日朝早くにとられる血液のための注射で、細い腕にはもうどこにも刺すところがなくなり、首に穴をあけそこに管を通し採血するなど痛々しいことを何度も繰り返していきました。
 
娘はとにかく「生きる」ことだけを目標にという言葉ではあまりにも苦しすぎる毎日を過ごし、ついに選択は「骨髄移植」のみに絞られました。
 
 
ドナーから骨髄を分けてもらい、新しい骨髄で体を一から作り直すもの。
でもそれまでの体を一度手放すということは想像以上に苦しみを伴うもの。
 
私たちはまた選択を迫られました。
 
泣きじゃくる娘が決めたのは、「生きる」。
そのためにこの苦しみも超えてやるという決意。
 
「どうなるかわからない」という選択はありません。
「生きる」為に必要だから。
生きてやりたいことが沢山あるから、迷うことなく生きようと決めたのだと思います。
 
 
そして、ここで一つ奇跡が起きました。
 
移植のドナーは見つかる確率、皆さんご存じですか？
 
東京ドームは観客が満席で5万人弱になるそうです。
仮に観客席が満席で、マウンドに一人ドナーを探す子が一人立つとします。
この1人の子のドナーになれるのは、満員の観客のうち何人いると思いますか？
 
 
実は1人いるかいないか。
 
 
それほどドナー適合には厳しい現実があります。
 
移植を決めてドナーが現れるまで待たなければならないのかと落胆していた時、なんと妹とお姉ちゃんのHLAの型がぴたりと一致することが分かったのです。
 
とてつもない奇跡。
 
でも妹は当時小学生。
とてもそんな怖い思いや大きな責任を押し付けるわけにはいきません。
 
でも、この子はそんな親の気持ちを察したのか、「お姉ちゃんが助かるならドナーやるよ」と言ってくれました。
 
あぁ、こんな小さな子も一緒に戦ってくれているんだな。
こうして骨髄移植に向けて準備を進めることが始まりました。
 
 
そして2つ目の奇跡。
 
娘が移植の直前に高校を卒業出来ると決まったのです。
 
車いすに乗って式に出て、そしてなんとクラス代表で壇上に上がる…。
親が無理だと思っていることを、何度も頑張りで越えていく娘の姿に、会場の誰よりも泣いてしまいました。
 
そして沢山の皆に囲まれ、後輩に応援され、娘は移植を受ける病室へと戻っていきました。
 
その骨髄を提供するために、もう一人の娘が病室へ。
 
そして麻酔が抜けきらない中、骨髄を提供する手術から出てきた妹は、ボーっとする眼の中で誇らしげにピースをしてくれています。
 
 
家族がまた一つ大きく成長できました。
 
骨髄移植後、娘の数値は良くなっていきました。
 
 
長い戦いを越え、仮退院を越え、本退院を迎え娘は家に帰ってきました。
 
車いすに乗り久しぶりの我が家。
ぐったりとしながらも、「やっとだ」と。
誰もがこのまま体力の回復を待ち、元気になっていけると思っていました。
 
でも、この病気はそう望むことを許してはくれませんでした。
 
退院して20日後、発熱。
緊急入院。
 
医師からは「再発」の言葉をかけられました。
 
「生存率」はあまりにも想像したくない一桁。。。
 
もう希望を持つことさえ許されないのか。狂いそうになる気持ちを何度も何度も、味わわされました。
 
そこでも娘は「しょうがない、やるか」
 
そう声を発します。
 
何より絶望を感じている本人のはずなのに、一番前を向く娘。
 
私たちも下を向くわけにはいきませんでした。
 
 
こんなにも苦しい思いを2回もさせなければならないのか。
申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、3回目の奇跡がその気持ちを打ち消しました。
 
なんとドナーが奇跡的に見つかったというのです。
厳密には万が一に備えて、担当の医師がドナー協会に以前から問い合わせしてくれていた結果でした。
 
医師も私たちと一緒に戦ってくれている。
 
前を向かない理由は何一つありません。
 
2回目の移植は、それはそれは辛いものとなりました。
 
それでも乗り越えて普通の病室に帰ってきた娘。
ただ、思うように良くなってくれませんでした。
 
私の頭によぎる「生存率」の数字。
 
肺にたまった水が抜けず、毎日フルマラソンを全速力で駆け抜ける状態で過ごしているような苦しさが、娘に襲い続けていました。
 
 
その時4つ目の奇跡が起きたんです。
 
数日前に厚生労働省が、娘の病気に対して保険適用すると認めた薬があると情報が持たされたのです。
本当に藁にもすがる思いとはこのことをいうのでしょう。
 
この薬が効かなければ、私たちはアメリカにわたり治療を探すことを検討しなければならないところにまで、追い込まれていた中での希望の光。
 
この薬が効くか効かないかで、その後の進め方も変わってくる。
でも、そんな不安は必要ありませんでした。
 
娘の体が大きく回復したのです。
医師も驚くほどの回復。
 
一本一本、娘の体から管が抜け、ようやく首から体に入れられていた管が抜けた時には、大きく息を吸い込む娘の姿がそこにありました。
 
入院から2回の季節を越えて娘が返ってくることが叶いました。
 
 
今、娘は大学に通っています。
 
英語が得意で、キャリアウーマンを目指し、タワマンに住むなんて言っていました。
でも、今選択した大学は医療系。
 
病気と闘う中で支えてくれた沢山の医療関係者の一員となることを、娘は選択することにしました。
 
生きると決めた。
それはやりたいことをやる人生をつかむと決めたからこそ。
そうして動き始めた人生ですが、病気に悩む方に伝えられる事があります。
 
「治りますか？」
その声に「はい・いいえ」だけで明確にお答えすることはできません。
元気になっていただくために必要なことを、私はさせていただきます。
そして数年後「そんなこともあったね」と笑って振り返る日がくると信じて進む。
 
その日を迎えられた時、
「治りますか？」
の答えが見つかります。
 
 
その日を迎える為に私はお役に立ちたいと考えています。
その思いが私が皆さんにかける「大丈夫」の言葉に込められています。
 
体を壊し、心を壊し、大きな病気と闘うこと、乗り越えた経験をした私。
 
「大丈夫」と伝えられる整体院を今作っている途中ですが、これが私の整体院のストーリーです。